赤甲羅な雑記

アニメ・マンガとかの記事を書く量産型無個性ブログです

MENU

映画「メッセージ」の感想  

 

映画「メッセージ」(原題はARRIVAL)を見ました。監督さんは今度公開されるブレードランナー2049の監督さんだそうですね。全く知らなかったですけど今回の映画を見て結構期待できるんじゃないかと思いました。

それで映画の内容としてはざっくりいうと世界各地に超巨大な黒い物体、通称「BAKAUKE」が12体出現しそのあまりの神秘性と超越性によりBAKAUKE教なる宗教が爆誕、神であるBAKAUKEによる啓示を受け早々に狂信者たちによる世界大戦が勃発しました。お互いをBAKAUKEで殴り合う混沌とした戦いが世界中で繰り広げられ、最終的にはBAKAUKEが宇宙の原初であり全ての真理であるみたいなオチがつく映画でしたね。いやー深淵な映画でしたねえ…。そういえばBAKAUKEとBUKKAKEってよく似てますね。もしかしてこれも何かの真理か…?。

 

まあそんなことはなく、実際には昔からよくある未知との遭遇的な映画でした。最近だとSF作家の野崎まど脚本の正解するカド、古典だとアーサー・C・クラーク幼年期の終わりとかみたいなドンパチやるタイプではなくて未知の知性存在とコミュニケーションをとっていくタイプの作品です。人類のシフトアップを取り扱っている作品だとこういうカンジの作品が多い気がします。

本作の特筆すべきは登場する未知存在(ヘプタボット)の異様さ、そして言語に寄り添った接触方法がまず挙げられると思います。まず何と言っても従来作みたいに親切に喋ってくれませんし、適当な人間乗っ取ることもせずにウォーーーンと呻くだけ。ジェスチャーとホワイトボードでやっとこさなにかしらのレスポンスが得られたもののこれまたワケの分からんロゴグラムと呼ばれるイカスミをBUKKAKEた様な文字。これの解読をしつつどうにかこうにかヘプタボットとコミュニケーションしていくまでの過程でだいたい前半が終わります。

今までだったらワレワレハウチュージンデアルでだいたい終わってたんですがそれを実践するまでにとんでもない時間がかかっています。おいおいこんなに時間かけちゃったら観客飽きちゃうよと思うかもしれませんがSF的言語的エッセンスによる引き付け、そしてそれを差し込む絶妙なタイミングとストーリーの進行によりうまいこと観客を飽きさせない画作りになっています。この辺に監督の妙がありますね。SFの回りくどく専門的な部分を飽きさせないように作るのは大変な苦労があったかと思いますがすごいバランスでした。SF的な部分はもちろんのことですがそれ以外の演出にも細やかな配慮を感じます。

 

それでこのロゴグラムによる言語の解析が進むに連れ、どうもこのヘプタボットたちには時間の概念が無いようです。これはこの言語(ユニバーサル言語と呼ぶようです、宇宙的で共通的な言語でしょうか)を使用するモノたち特有の現象で次第に主人公にもこの兆候が現れます。この辺は正解するカドの「異方」と似たようなエッセンスを感じますね。

それで時間の流れを超越した主人公はその能力を不器用ながらも使用、なんのかんのあった人類のいざこざを丸く納めて大団円みたいな内容でした。ラストでは主人公はこの能力に戸惑いつつもこの力というより言語と感覚を受け入れて生きていくことを決意した感じで表題であるARRIVALがドーンとでてエンドロールが流れておしまい!って感じです。

ラストに関してですが未知知性存在がもたらすギフトによる人類の進化は幼年期の終わりでも明示されたように決して明るいものではなく、むしろそれはある種の押しつけであるというのは古典的にも言われていることです。しかしながら本作はかなり前向きなシフトアップで、それはかなり納得の行く進化のやり方だなと個人的には感じました。やはりこれにはヘプタボットが必要最小限どころかほぼほぼ無干渉なのが大きな要因で、あくまで自己進化を促しているのが大きいからなのかなと思います。道具はあくまで与えるだけ、使うかどうかはあなた達次第ということですね。また最後に二人が結婚するというエピソードも人間らしさを感じさせており、ユニバーサル言語によって今までの人類とは異なるかもしれないけど、それでも人間的に生きていくことができる、というある種の前向きなシフトアップ作品だなと感じました。表題よろしく言うと人類は新たな境地へARRIVALしたということですね。

 

あとばっさり端折ったんですが映像的な叙述トリックも見どころでした。序盤の映像ですが確かに過去の映像だと明言していなかったですね。こういう映像トリックとSFが組み合わさった演出は初めて見たので驚きです。クリストファーノーランの作品でこんなやつがあった気がしましたけど。

 

まあざっくり感想でしたが割と長くなりました。演出や画作りを見ると今後のデューンやブレラン2にも期待が持てる作品だったんじゃないでしょうか。監督の次回作にも乞うご期待です。

 

おわり。